2021/08/29
今回は、デンタルフロスは使ったほうが良いのかという事についてお話していきたいと思います。
矯正治療に関係なく、このフロスというものについて全く知らないという人は少ないのではないかなと思います。小さな容器にフロスの糸が巻き取られていて、糸を好きな長さだけ出して指に巻き付けて使うタイプや、糸ようじと呼ばれるようなプラスチックの柄の部分の既に巻き付けて合って、使い捨てにするタイプなどいろいろあります。このフロスの使用に関して言えば、使用していただくことをお勧めしています。その理由について少し詳しく説明していきます。
人間の歯はトウモロコシの粒の様な形をしており、切端(上下の歯と歯が当たる方向)から歯肉の方向に降りるにつれて少し膨らんできます。その膨らみの後、さらに歯肉方向に向けてくびれていくという形状のため、隣の歯同士が接触しているのは、歯が一番膨らんだ部分のみとなっています。そのため、しっかりと歯磨きをして、歯がつるつるになった!と感じてもフロスを歯の隙間に入れてみると磨き残しがたくさん出てくることもあります。
では次に、実際にフロスを使うときの注意点をお伝えしていきます。
初めてフロスを使う時は、あまり力を入れ過ぎず、ゆっくりと糸を滑らすようなイメージで使用してください。先程お伝えしたように、隣り合う歯同士がくっついているのは一番膨らんだ点だけなので、そこを過ぎると糸はスカスカな空間を通ることになります。入れにくいからと言って、ぐっと力を入れてしまうと接触点を通り過ぎた糸が歯茎に当たって痛みを感じてしまうこともあります。特にお子さんに使用するときにこの痛い思いをしてしまうと、今後使うのが嫌になったりしますので注意してください。
また、最初に説明した糸を引っ張り出して使うものと、初めから柄が付いているもののどちらが良いのですかという質問も受けることがありますが、これは使いやすい方でいいのではないかと思います。敢えて言うならば糸のタイプを使用する方が、指に巻いている部分をずらすことによって各歯の間を清潔な糸で磨けるので慣れればそちらの方がいいかなとは思います。
このフロスは、大人だけではなくお子さんにとっても虫歯リスクの軽減でとても有用なものですので、早いうちから使用して慣れておくことをお勧めします。また、矯正治療中の患者さんは、ワイヤーがあるため糸を通すことが出来ないので、ピックという鉛筆の先の様なブラシがありますので、治療期間中はそれで磨いていただき、装置が外れたらフロスにしていただくというのがベストだと思います。もし商品でどれがいいのかなどわからないことがあれば、いつでもお問い合わせください。
2021/08/05
今回は、同じ歯並びは存在するのかということについてお話していきたいと思います。
矯正治療の相談に来られた時に、芸能人のあの人と同じ歯並びにしてほしい、
ここで治療した知り合いの人と元々同じような歯並びだったので同じように治療してほしいという要望を受けることがあります。
これは現実的に可能なのかというところですが、可能な場合もありますし、難しい場合もあります。美容院でも、あの人と同じようにとオーダーしても顔や頭の形、髪の毛の癖や毛質などで少し思っていたのと違うということもあるのではないかと思います。
矯正治療は口の中の歯根や歯槽骨といった外から見えない所まで考慮しながら治療を行うため、人による差が大きく出てきます。
少し例を挙げていこうかと思います。
・出っ歯が気になるという症例
出っ歯が気になるので治療してほしいという人が相談に来たとします。
ある人は上顎の歯が外側に倒れてしまっていることによる出っ歯、別の人は下顎の成長不足によって相対的に見ると上顎が前に出ているように見える出っ歯という様に、一言に出っ歯が気になるという症状でも原因は同じとは限りません。
・開咬が気になるという症状
食べ物を前歯で噛みきりにくいという相談で来た人でも、上下の歯が離れていて噛めない状態の人や、上顎前突(上の出っ歯の症状)で歯が前後にズレているから噛めない人など原因が違ったり、複数の要因が関係してくることもあります。
また、矯正治療の途中でもよく、知り合いはもう終わったのに自分はなかなか治療が終わらない、知り合いはこれぐらいの期間で終わったと聞いていたのに自分はまだ掛かりそうなどの様に、治療期間に関する不安なども耳にすることがあります。
初めにおおよその治療予定をお伝えしますが、これは矯正治療の経験から一般的にはこれぐらいという概算の予定を計算したものをお伝えしています。
そのため骨密度や歯根の状態、取り外しが可能な可撤式矯正装置などを使用している場合は患者さん自身の装置の使用時間などによって大きく異なることもあります。
また、お子さんなどでは小さいうちは女の子の方が成長が早く、男の子の方が年齢が上がってから成長するスピードが上がってくるということもありますので、男女による治療のスピードなども多少出てくることもあります。
いずれにしても、私たち矯正治療を専門に治療している歯科医として、その患者さんに一番いいと思う方法をご提案し、納得していただいたうえで治療を行っていますので、気にするなというのは難しいかもしれませんが、他人を見るのではなく、ご自身の治療経過(初めと比べてどれだけ良くなってきたか)ということに注目していただけるとありがたいです。様々な治療に対するアプローチがありますので、少しでも何か不安に感じたときには遠慮なく相談していただけたらと思います。
2021/07/10
今回は、母子分離不安ということについてお話していきたいと思います。
聞きなじみのない言葉かもしれませんが、母子分離不安とは子供が母親から離れることに対して不安を感じることを指している言葉です。不安に感じることは人間誰しもが持っている自己防衛本能のため、安心できる母親から離れることに対して不安に感じるというのは当たり前のことだと思います。ただ、成長が進むにあたって、一人で行動しなくてはならない機会も増えてきて、その都度不安を抑えきれないという状態が続くと腹痛や頭痛などの身体的症状や、離れると泣き止まないというような精神的症状が出てきてしまうお子さんがいらっしゃいます。その状態が治まらないと、最悪の場合通園や通学が出来ないなど日常生活に大きな影響を及ぼしてしまうことがあるため、注意が必要です。
矯正治療の医院ではあまりそういったケースがあるわけではありませんが、虫歯などの治療を行っている一般歯科医院ではこういった状況を目にすることがあります。
母親と一緒に通院し、母親がずっとそばで治療を見守っていたとします。そうするとお子さんは母親の方ばかりちらちらと目で確認し、自分でどこが痛いのか・どこが変な感じなのかということを喋れないという子がいらっしゃいます。
こういった状況を少しでも回避するため、極力お子さん一人で治療を受けてもらう様に心掛けている歯科医院が増えてきています。もちろん治療計画の相談や、難しいことに関しては親御さんにお話ししますが、継続中の治療などに関しては親御さんには待合室で待っていただくことをお勧めしています。
初めはとても不安そうに診療室に入ってくるお子さんでも、一人でしっかりとお話して、治療が終わった後に待合室に戻っていく姿を見ていると、とても自信満々で一段階大きくなったように感じることもあります。
これから様々な場所や物事を経験していくお子さんの成長のステップとして、治療や歯のメンテナンスでの歯科医院をうまく活用していただくのもお子さんの成長の大きな一歩になるのではないかと思います。
私たちスタッフ一同も、出来るだけ不安を与えない様にゆっくり、声を掛けながら治療するように注意していますので、一人で治療を受けて帰ってきたお子さんのことはしっかりと褒めて、自信を持ってもらうことが出来るような対応をお願い致します。
2021/06/08
今回は、お子さんの矯正治療において、特に可撤式装置で治療される場合に、親御さんに注意して頂きたい点についてお話していきたいと思います。
1、装置の保管について
お子さんの矯正治療では大きく分けて、つけっぱなしにする装置と可撤式(取り外しができる)装置の2種類あります。これは不正咬合の状態や、お子さまの成長具合によって使える、使えないというのがありますので、自由に選べるわけではありませんが、ある程度選択できる場合もあります。
この時に、可撤式装置を選択した場合に、装置の管理をお子さん任せにしてしまうと、紛失や破損するというケースが増えてしまいます。何かの拍子にちょっと外してそのまま無くしてしまったり、外したものをうっかり落としてしまう・踏んでしまうなどで破損することも多々ありますので、そうならない為にも外した際の置き場所や定期的なチェックをお願いしております。万が一、装置を紛失・破損してしまった場合は再度自費での装置作成となってしまいます。
2、使用時間に関して
可撤式装置は取り外しができる装置なのですが、好き勝手外していいというものではありません。決められた時間以上は装着していただかないと装置の効果を発揮できないので、装着時間に関しては定期的にチェックしていただく必要があると思います。私たちもしっかり装着するようにお話はしますが、子供の場合ついつい忘れてしまったり楽な方に逃げてしまうということもあります。日々の声掛けや場合によっては抜き打ちのチェックなども効果的だったりします。
今回は可撤式装置に注目してお話していきましたが、管理がしっかりと出来ない子供のうちは特に親御さんにチェックをしていただく機会がたくさんあります。親御さんもお忙しいとは思いますが、私を含めて医院のスタッフと親御さんのダブルチェックでしっかりと効率的な治療を行っていけるよう努力しますので、ご協力よろしくお願いします
2021/06/01
今回は、小児矯正のメリットに焦点を当ててお話していきたいと思います。
矯正治療は一般的に、Ⅰ期治療とⅡ期治療に分けられます。
Ⅰ期治療が今回の話にも上がる小児期における矯正治療で、
Ⅱ期治療が永久歯の生え揃った頃以降に行ういわゆる本格矯正(ワイヤー矯正)というものです。
ではなぜこのⅠ期治療とⅡ期治療を分けているのでしょうか?
・Ⅰ期治療
小児期はまだ顎などの骨の部分が成長中なので、
上手く成長を誘導してあげることによってその分のスペースなどを確保しやすくなります。歯を抜くリスクが少なくなると言われているのはこのためです。
ただ成長も都度確認しながら治療を行いますが、
こうなって欲しいというところまで成長が進むかは個人差があります。
・Ⅱ期治療
永久歯が生え揃い、骨の成長も止まっていますので、今ある骨のスペースに歯を並べていくという治療になります。
骨の成長は見込むことが出来ませんので、スペースが足りない場合は抜歯などの処置をご提案させていただくことがあります。
この様に、Ⅰ期治療とⅡ期治療では治療の目的に大きな違いがあります。
では話の本題に戻って、小児矯正を行うことによってどの様なメリットが考えられるのでしょうか?
上にも書きましたが、小児矯正では骨の成長をコントロールする幅があるので、抜歯の可能性を少なくすることが出来ます。ただこう書くと、「抜歯=悪いこと」と捉えられてしまうことが多いのですが、決してそうではありません。
食事などで物を噛む時に、歯には自分の体重程の力が掛かっていると言われています。(力を入れて食いしばっているときにはその倍以上の力が掛かっているとも言われています。)その噛む力を分散させるときに、歯の本数が多く残っているとその分1本の歯に掛かる力が少なくて済み、結果として歯を長持ちさせることに繋がります。
成人の矯正治療で絶対に非抜歯で治療しますという文言を目にすることもあります。
確かに歯を並べるだけであればそういった治療も可能だと思いますが、先程述べたように、上下でしっかりと噛み合った状態になっているかどうかに関しては少し疑問が残るのではないかと思います。しっかりと噛み合っていなければ、歯が多く残っていても結局噛んでいる部分にだけ力が掛かってしまいますので、歯の長期安定という意味では難しくなるのではないかと思います。
こういった観点から小児矯正では、今現状の成長過程から将来歯が並ぶスペースが足りなくなってしまいそうなお子さんに関して、骨の成長を促すことによって歯が並ぶスペースを確保してあげるというのが一番大きなメリットではないかと思います。
乳歯と永久歯では本数も歯の大きさも異なりますので、
小児期の時点で歯がデコボコになっているという場合はスペースが足りなくなる可能性が高いので、一度検査を受けてみるのもいいのではないでしょうか。
もちろんその他にも気になることがある場合は、相談だけでも構いませんので一度お越しいただけたらと思います。