2021/05/01
新しい年度も始まり、慌ただしい生活も少し落ち着いてくる時期ではないかと思います。
そんな中、落ち着いたので矯正治療の相談に来ましたという方も多くなっています。
そうした方々のお話を聞いていると、少し気になるコメントが出ることがありますので、
今回はその気になった内容についてお話していこうかと思います。
兄弟のお姉ちゃん、もしくは妹さんの治療を考えているということで来院されたご家族で、お兄ちゃんや弟君の治療はどうしますかと尋ねてみると、
「男の子だから必要ないかな」といった内容の返答を聞くことがあります。
おそらくこういったお考えの方は、矯正治療=美容治療の様なイメージがあるのではないかと思います。
もちろん審美的な効果も大きいかと思いますが、
矯正治療にはそれ以外の効果ありますので少し紹介していきます。
・清掃性
叢生(凸凹、乱ぐい歯)が強い人だと、隣り合う歯が重なって生えているような症例も少なくありません。
重なっている部分が大きくなると、どうしても歯ブラシが届きにくい所が出来てしまい、虫歯や歯周病のリスクが上がってしまいます。
将来的に自分の歯を多く残すという観点からも清掃性の向上は
とても意味があることかと思います。
・発音の問題
将来のことを考えて英会話教室に通わせているという方も、
昔より増えているのではないでしょうか。
英語には息を抜くように発音する音があるため、
歯と歯の間に隙間があるとこの音を上手く発音することが難しくなります。
・身体的な不調
食べ物を食べたり、スポーツなど力を入れるときにぐっと歯を食いしばったりすると、
歯には数kgから数十kgの力が掛かっていると言われています。
きちんと上下の歯が全て噛み合っているとその力が分散されますが、
片側でばかり食べ物を食べていたり、
噛み合わせがバラバラになっていると大きく力が掛かってしまう歯が出てきます。
これが続くと、顎関節や肩こりなど不調が出てくることもあります。
この様に、審美的な面以外でも矯正治療はとてもメリットがあるのではないかと思います。
もちろん、就職活動や結婚の前に審美面での治療を検討される男性もたくさんいますので、男の子に審美が必要ないと言っているわけではありません。
もしお子さんの将来のことを考えてあげるなら、
様々な側面から治療を検討してあげるというのも有意義なのではないでしょうか。
もちろんご自身だけでは判断できない場合などもあるかと思いますので、
気になる点や悩んでいる場合などはいつでもお気軽にご相談ください。
2021/03/27
今回は、親子で矯正治療を一緒に行うということに関するメリットについてお話していきたいと思います。
4月は新しい年度の始まりということでいろいろな事がスタートする月です。そうした新生活に向けて、春休みの期間を利用してお子さんの矯正治療について相談に来られる件数は普段より多い様に思います。そこで、一緒に相談に来られている親御さんも治療を受けていただくということがメリットに繋がることがありますので、どの様な点があるのかをご紹介していきたいと思います。
・治療の予約を忘れにくくなる
お子さんも学校生活や部活動など、年齢が上がっていくと共にいろいろと忙しくなってくるかと思います。また、それに伴って親御さんも日々の仕事や家事に時間を取られて、忙しくされているのではないかと思います。
矯正治療は個人差がありますが、大体1~3か月に1回程度の治療を行っております。そのため、お子さんだけで予約を把握しようとしても初めのうちはしっかりと意識していただいているのですが、治療を続けるにあたって慣れが生じてきて、治療予約を忘れてしまうということがしばしば見受けられます。そうなると治療の予約を変更し、後延ばしになってしまうこともありますので、治療の終了時期にズレが生じてしまうこともあります。
ただ、親御さんも矯正治療を受けるとなると、おそらく予約の時期も大体お子さんと同じようなタイミングになるため、お互いに次の治療予約に気を付けながら日々を過ごしていただくことが出来るのではないかと思います。また、治療の段階においては顎間ゴムなど、患者さん自身で取り外しを行ってもらう装置を使う事も多いため、お互い付け忘れが無いかの確認をすることも出来ます。
・共感するということ
お子さんが大きくなってくるとそこまで無いかもしれませんが、まだ小さいお子さんだとやはり矯正治療に対する不安や少しの痛みが、自分一人だと思うと大きく出てしまうことがあります。また、そのことを親御さんに相談してもご自身が経験していないとなかなか実感しづらいのではないかと思います。お父さん、お母さんも一緒に矯正治療を頑張っているから自分も頑張ろうというモチベ―ションは、治療の効率に繋がってきますのでとても効果的な方法だと思います。
この様に、お子さんの年齢によって多少メリットの部分が変わってきますが、少なくとも一緒に始めることに対するメリットが無いということはないと思います。長い矯正治療期間を一緒に頑張ることによって、より親子の絆を深めつつ、お互いの綺麗な歯並びを手に入れるために治療を検討してみるのもいいのではないでしょうか。
2021/03/14
今回は、電動歯ブラシというテーマで少しお話していきたいと思います。
最近、新型コロナウイルスによる感染予防対策としてマスクを常時装着するという習慣から、矯正治療を開始する・開始しようかと相談に来られる方が増えています。
矯正治療では、私たち矯正歯科医が矯正装置(ブラケット、ワイヤー)を装着して治療を行っていくのですが、
患者さんにも自宅での顎間ゴムやしっかりとしたブラッシングをお願いしているため、そういったトレーニングを治療中に行うこともあります。
その際によく、歯ブラシは電動にした方がいいのかといった相談を受けることがありますので、こちらについて掘り下げていきたいと思います。
◆電動歯ブラシとは
まず電動歯ブラシは大きく分けて電動歯ブラシとアシストブラシの2種類に分けられます。
電動歯ブラシとは皆さんが思っているタイプだと思うのですが、電動でブラシの部分が回転・スライドもしくはその両方の動きをするもので、
歯に軽く押し当てておくだけで歯ブラシが勝手に動いて歯面を清掃してくれるというものです。
最近ではアプリと連動して、押し付けすぎや磨いた部分を教えてくれるものなどもあるようです。
それに対してアシストブラシとは、ブラシの毛先部分が微細な振動をするように設計されており、文字の通りブラッシングをアシストしてくれるものです。
つまり、こちらは使用者が手で歯ブラシを動かして磨く動作が必要となります。
◆電動歯ブラシのメリット・デメリット
メリット
・歯垢除去能力が高い
・当てているだけで歯面を磨いてくれるので楽
・上手く当てれば矯正装置の細かい隙間まで磨きやすい
デメリット
・性能によってかなり高価なものが多い
・振動などが気になるという人もいる
・力を入れすぎると矯正装置の破損に繋がることもある
もちろんこれ以外にも細かいメリットやデメリットは人によってたくさんあるかと思います。
では実際電動歯ブラシはお勧めなのかというお話ですが、矯正装置の種類に左右される部分もあり、必須だとは思っていません。
メリット・デメリットの所にも矯正治療としての内容を記載しましたが、上手く使える場合は非常にメリットがある一方、
使い方を間違えてしまうと治療の影響が出てしまうこともあります。
また、矯正治療中の歯磨き専用の歯ブラシでブラケットの隙間やワイヤーと歯の間に毛先が入りこんで磨けるタイプなどもあり、
そういった歯ブラシの方がトラブルにはなりにくいと思います。
そのため、電動歯ブラシに関して言えば、矯正治療後に患者さん自身で持ってみた重さ、
ヘッドの形状や大小など使いやすいと感じるものを選ぶのが一番いいかと思います。
これまでも伝えてきましたが、矯正治療でのメリットとして、歯並びの見た目の改善ももちろんですが、
歯並びが改善されると叢生(凸凹、乱ぐい歯)で歯が重なっている部分が少なくなるため歯磨きがしやすくなります。
また矯正装置を装着している間にかなりブラッシングの技術は高くなっているかと思いますので、矯正治療中、矯正治療後もお口の健康を守っていければと思います。
2021/02/07
今回は矯正治療と少し離れますが、お子さんのご褒美についてというテーマでお話していきたいと思います。
このテーマに関しては心理学でも研究されており、「アンダーマイニング効果」と
「エンハンシング効果」というものが関係してきます。
それぞれどの様なものかを説明していきます。
・アンダーマイニング効果
心理学の用語で説明すると、「内発的に動機づけられた行為に、外発的に動機づけを行うことにより、モチベーションが低減する効果」となります。簡単に言うと、自ら進んでやっていることに対して、他人から報酬を受け取ると報酬を受け取ることが目的に代わり、自らの自発的な行為ややる気が失われるというものです。
これが起こる原因として、人は誰でも「自分のことは自分で決めたい」、「できることをできるようになりたい」という欲求を持っています。そのため、ある行動を自ら興味・関心を持って取り組んでいるうちは、「自分の行動を自分で決定している」という自己決定感を抱き、意欲的に行動します。
しかし、自分の行動が他人から監視・評価されていると感じると、自己決定感が低下し、「やらされているという感覚」が強くなって意欲を喪失してしまうのです。
つまり、報酬を与えられることで元々は自発的に始めた行動でも、「他人からやらされている」という感覚になり、アンダーマイニング効果が生じるようになります。
・エンハンシング効果
これはアンダーマイニング効果の逆の様な意味合いなのですが、心理学用語では「外発的動機づけによって内発的動機づけが高まるという効果」を意味しています。
例えば、尊敬する上司から仕事ぶりを褒められて仕事への意欲を高める、志望校合格が決まり、普段は人を褒めない父親から「よくやった」と言われて「大学でも頑張ろう」と思うことなどが、エンハンシング効果です。エンハンシング効果が生じるには、賞賛などをする人と本人の関係性が重要であり、赤の他人や嫌っている人から賞賛されても効果はありません。
この様な研究が、心理学の分野では行われています。
これを私たちの身近な例で考えてみると、治療中のお子さんに対して、
「毎日のブラッシングを頑張ったらお小遣いをあげる」などのご褒美を使用している方は少し注意が必要かもしれません。もちろん、一時的なやる気を出させるなどの効果として、ご褒美は有効だと思います。ただ、これを継続してしまうとお子さんにとってブラッシングは虫歯を作らない行為からご褒美をもらう行為に意識が行ってしまい、早くご褒美をもらうために少しずつブラッシングが疎かになってしまう可能性も考えられます。
また、矯正治療においては、顎間ゴムやリテーナー(保定装置)など、患者さんご自身で着脱して使用するものもあります。これもしっかりと計画通りに使用しないと、歯の動きが予定通り進まず、治療期間が延びてしまうこともあります。そのため、お子さんがしっかりと顎間ゴムやリテーナーを使う用に、何かしらご褒美を上げるというのは少し注意する必要が出てきます。
お子さんの教育でよく、「褒めて伸ばす」という言葉を耳にしますが、この様に上手にエンハンシング効果を用いながら、アンダーマイニング効果を起こさないように少し意識していただくのがいいのではないかと思います。私たちも矯正治療が嫌にならない様、楽しくコミュニケーションをとりながら、日々の努力に関しては褒めるということを意識していますので、もし親御さんから見て、何か気になる点などあったらいつでもお申し付けいただけたらと思います。
2021/01/24
今日は顎偏位について少し書いていこうと思います。
顎偏位という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「がくへんい」と読みます。
これは、噛み合わせが左右どちらかにずれている状態を指します。
正常な咬み合わせ、歯並びの場合は上下の前歯2本の間=正中が揃っているので、
パッと見てその正中にズレがあると顎編位の可能性が分かります。
(正中のずれがあっても歯の幅の左右差によって問題がないケースもあります。)
しかし、前歯の上下は揃っているのに、奥歯の方をチェックしてみると顎編位になってしまっているという患者さんがいるので注意が必要です。
■顎偏位による問題
上下の噛み合わせが左右どちらかにずれているということは、
食べ物を噛む度に使う筋肉のバランスも偏ってしまいます。
口周りの筋肉は顔や首から肩にかけてつながっていきますので、
様々な身体の不調につながってしまうリスクが存在します。
また、咀嚼自体にもしっかりと噛めないことで、栄養吸収の問題なども起きてしまいます。
もちろん状態が悪いと、口を閉じていても顔の左右バランスがズレていて、
見た目も悪いということもあります。
■顎偏位の原因
様々な原因が挙げられますが、お子さまにおいては頬杖などの癖がないかをチェックしてあげてください。遺伝によるものもありますが、頬杖などの外的要因が影響して、顎偏位につながったり、あるいは放っておくと悪化することもありますので、早めの対処をしましょう。
■顎偏位の治療について
顎偏位の治療については、患者さんの年齢や状態の重度によって変わってきます。
軽度の顎偏位であれば歯を抜かず、手術をしないで治りますし、
重度の顎偏位の場合は抜歯、手術を伴うこともあります。
この顎偏位に関しては、患者さんご自身が気付かないということも結構ありますので、
ぜひ一度奥歯を鏡でチェックしてもらえればと思います。
通常上顎の奥歯が少し下顎の奥歯の外側に来ています。
もし下顎の奥歯が上顎の奥歯よりも外側に出ているようでしたら、
顎偏位の可能性がありますので、一度検査されることをお勧めします。