2021/10/29
今回は少し心理学的な話も含めて、お子さんの矯正治療に対する親御さんの接し方についてお話していきたいと思います。
矯正治療以外の普段の教育方法についても参考になりますので、是非ご確認ください。
今回お話するのは、サイモンズという心理学者による親の対応について分類したサイモンズ式分類についてです。
親の接し方により、お子さんがどのように成長していくかを分析した理論で、
大きなカテゴリーとして、「支配型」「服従型」「保護型」「拒否型」という4つの基本軸があります。
・支配型
お子さんに対して威圧的に命令したり、物事を強制するという教育方法。自発的だが顔色を窺い、自発的行動を取りにくい性格になりやすい。
・服従型
親がお子さんの顔色を窺って行動を決めるという教育方法。言う事を聞かない、自己中心的な性格になりやすい。
・保護型
一般的に過保護と言われるような教育方法。身を守る方法を身に着けられないという一方で、精神的には安定した性格になりやすい。
・拒否型
親がお子さんを無視したり、拒否するという教育方法。落ち着きがなく、周りの目を引くために乱暴な行動を取るといった性格になりやすい。
さらにそのカテゴリーを組み合わせた複合型の「支配型+保護型の過保護型」「保護型+服従型の甘やかし型」「拒否型+服従型の無関心型」「支配型と拒否型の残忍型」という
4カテゴリーに分類されます。
・過保護型
子どもの世話を焼き過ぎて、子どもの自発的な行動機会を奪っている教育方法。依存心を持ちやすくなったり、集団になじみにくくなったりする傾向があります。また、お子さんの依存心が強くなり、幼児的なふるまいが抜けなくなることもあります。
・甘やかし型
お子さんを極度に甘やかし、何でもしてあげるという教育方法。甘やかし型で育ったお子さんは、自己中心的で忍耐力のない、
反抗的な性格になる傾向があります。さらに甘やかし方では、人を尊敬できなくなるともいわれています。
・無関心型
親がお子さんに対して関心を示していない教育方法。無関心型で育ったお子さんは、警戒心が強く、神経質で寂しがりな性格になる傾向があります。
また、お子さんは親が何を思っているのかわからないため、情緒不安定になるとこもあります。
・残忍型
親に無視されながらも、支配されているというお子さんにとってとても窮屈な教育方法。
この残忍型で育ったお子さんは強情な性格になりやすく、親から逃れようと逃避行動をすることもあります。
以上が、サイモンズ式分類による4つの基本軸とカテゴリーという考え方です。
いずれも偏ってしまうと上記の様な極端な教育方法になりやすいため、全ての軸やカテゴリーに対してバランスよく行っている教育が理想的だという考え方になります。
少し長くなりましたので、次回上記の分類を歯科矯正に関連させて見ていきたいと思います。
2021/10/03
今回は、取り外しが可能な装置を装着するのが苦手な人へ、ワンポイントアドバイスなどが出来たらと思います。
まず取り外し式装置にはどの様なものがあるかを紹介していきます。
・ヘッドギア、フェイスマスク
顎の骨の成長を促したり、抑制したりするために使用する装置です。10時間以上は使用していただきたいので、帰宅後から翌日出掛けるまでの間で使用していただくことが望ましいです。顎の骨の成長に伴って使用するため、お子さんに使用する機会が多い装置です。
・拡大床(しょうきょうせい)
顎の側方拡大を行うために使用する装置です。プレートの真ん中にねじがあり、ねじを回すと装置が広がります。その広がる力を利用して拡大を行うため、装着時間が短いと期待した効果が得られません。こちらも10時間以上は使用していただくことが理想です。
・リテーナー
矯正治療が終了した後に、後戻りを抑制するために使用する装置です。矯正装置を取り外した直後からしばらくの間は常時装着いただきますが、徐々に装着時間は短くすることも可能です。寝る時などには使用していただくことをお勧めしています。
・マウスピース型矯正装置
矯正装置として透明のマウスピースをたくさん作成し、ステージ毎に少しずつ形の変えてあるマウスピースに着け変えていく治療法です。最低でも20時間以上は装着いただく必要がありますので、食事など以外では常時装着いただくと思っていただく方がいいかと思います。
こういった装置を装着するのが苦手という声を聴くことがありますが、
1、違和感があって装着が苦痛・寝ているときに外してしまう
2、装着自体をつい忘れてしまう
多くの方がこのパターンではないかと思います。
1、違和感があって装着が苦痛・寝ているときに外してしまう
こういった方で共通してみられやすいのが、装着時間が少し短いように感じます。口腔内は少しの異物でもはっきりと分かるほど敏感なため、違和感を感じるというのは納得が出来ます。装着自体に慣れてくると少しずつ違和感も少なくなるため、寝る直前に装着するのではなく、1-2時間前には装着して少し慣らしておくという事を試してみてください。
2、装着自体を忘れてしまう
矯正装置は意識して自分で装着していただく必要がありますので、ご自身の生活スタイルを見直し、その同線上に装置を保管してみてください。毎日ソファーに座るという人はその近くに置いてもいいですし、お風呂上がりの洗面所を使う時間が長いという人はそこに置いてもいいと思います。また、お酒が好きな人はついつい酔っ払ってそのまま寝てしまうという人もいるかと思いますので、矯正治療期間は少しだけお酒の量を減らし、装置を装着する意識を保てるようにしてみてください。
ブラケットやワイヤーを使用する矯正装置は、歯科医院で装置の着脱を行うため、ご自身では出来ません。しかし、こういった取り外し式装置に関しては患者さんの意志の力がそのまま効果に結び付くと言っても過言ではありません。装着時間をしっかりと守っていただかないと、治療が伸びるだけではなく、治療方法の変更なども検討しなくてはいけなくなる可能性もあります。せっかく治療をすると決断したのですから、目標に向かって最後まで一緒に頑張っていきましょう。
2021/09/09
今回は、以前患者さんから問い合わせがあったムーシールドという装置についてお話していきたいと思います。
以前問い合わせをして頂いた方は、幼稚園に通うママ友からムーシールドを使用しているという話になったようで、ご自身のお子さんも歯並びが少し気になっていたという事から来院されたとのことでした。
ムーシールドは適応する症状と適応しない症状がありますので、いくつか子どもの矯正治療における装置の種類についてご紹介したいと思います。
■ムーシールド
今回の本題でもあるこの装置は、下顎前突(しゃくれ)を改善するための装置です。
お子さんの中で、下の歯が上の歯より前に出ている時などに使用して、
正常な咬み合わせに誘導するという装置です。
取り外しが出来る装置で、日中や寝ている時に装着し、
舌や口周りの筋肉を整えることが治療の目的となります。
■プレート(拡大床)
プレートも取り外しが出来る装置で、上顎を広げることによって永久歯が生える際の噛み合わせや歯並びを誘導する目的があります。
■急速拡大装置
急速拡大装置は臼歯部にバンドという金属のリングを装着し、
上顎左右のこのバンドに固定してしまう装置のことです。
真ん中にあるねじを回して少しずつ装置を広げることによって上顎を広げる目的があります。拡大床と作用等は近いものがあります。
■ヘッドギア
ヘッドギアは上顎前突(出っ歯)の治療に用いられる装置です。
成長しすぎている上顎を抑えたり、上顎の奥歯を少し後ろに後退させて上下の噛み合わせのバランスを整えるために使用することがあります。
■その他数種類あり
この様に、小児矯正としてⅠ期治療で使用する装置はたくさんあります。
ただ、小児矯正は将来の成長なども想定しなくてはならず、確実に治療結果が思った通りにならないこともあります。ムーシールドや拡大床などを使用すると全て非抜歯で治療が出来ますと言い切っているような広告なども見掛けることがありますが、これに関しては少し怖いなと感じることもあります。人により症状は、さまざまですから全て非抜歯治療にすることは私は難しいと考えます。
私たち、矯正を専門に治療する歯科医として相談に来ていただいた患者さんはしっかりと診査・診断を行い、その結果治療の効果が見込まれそうな場合は使用をお勧めすることもありますし、反対にあまりお勧めできないこともあります。見た目では判断しにくいこともたくさんありますので、何か気になることがある場合は相談だけでも構いませんので、いつでもお問い合わせください。
2021/08/29
今回は、デンタルフロスは使ったほうが良いのかという事についてお話していきたいと思います。
矯正治療に関係なく、このフロスというものについて全く知らないという人は少ないのではないかなと思います。小さな容器にフロスの糸が巻き取られていて、糸を好きな長さだけ出して指に巻き付けて使うタイプや、糸ようじと呼ばれるようなプラスチックの柄の部分の既に巻き付けて合って、使い捨てにするタイプなどいろいろあります。このフロスの使用に関して言えば、使用していただくことをお勧めしています。その理由について少し詳しく説明していきます。
人間の歯はトウモロコシの粒の様な形をしており、切端(上下の歯と歯が当たる方向)から歯肉の方向に降りるにつれて少し膨らんできます。その膨らみの後、さらに歯肉方向に向けてくびれていくという形状のため、隣の歯同士が接触しているのは、歯が一番膨らんだ部分のみとなっています。そのため、しっかりと歯磨きをして、歯がつるつるになった!と感じてもフロスを歯の隙間に入れてみると磨き残しがたくさん出てくることもあります。
では次に、実際にフロスを使うときの注意点をお伝えしていきます。
初めてフロスを使う時は、あまり力を入れ過ぎず、ゆっくりと糸を滑らすようなイメージで使用してください。先程お伝えしたように、隣り合う歯同士がくっついているのは一番膨らんだ点だけなので、そこを過ぎると糸はスカスカな空間を通ることになります。入れにくいからと言って、ぐっと力を入れてしまうと接触点を通り過ぎた糸が歯茎に当たって痛みを感じてしまうこともあります。特にお子さんに使用するときにこの痛い思いをしてしまうと、今後使うのが嫌になったりしますので注意してください。
また、最初に説明した糸を引っ張り出して使うものと、初めから柄が付いているもののどちらが良いのですかという質問も受けることがありますが、これは使いやすい方でいいのではないかと思います。敢えて言うならば糸のタイプを使用する方が、指に巻いている部分をずらすことによって各歯の間を清潔な糸で磨けるので慣れればそちらの方がいいかなとは思います。
このフロスは、大人だけではなくお子さんにとっても虫歯リスクの軽減でとても有用なものですので、早いうちから使用して慣れておくことをお勧めします。また、矯正治療中の患者さんは、ワイヤーがあるため糸を通すことが出来ないので、ピックという鉛筆の先の様なブラシがありますので、治療期間中はそれで磨いていただき、装置が外れたらフロスにしていただくというのがベストだと思います。もし商品でどれがいいのかなどわからないことがあれば、いつでもお問い合わせください。
2021/08/05
今回は、同じ歯並びは存在するのかということについてお話していきたいと思います。
矯正治療の相談に来られた時に、芸能人のあの人と同じ歯並びにしてほしい、
ここで治療した知り合いの人と元々同じような歯並びだったので同じように治療してほしいという要望を受けることがあります。
これは現実的に可能なのかというところですが、可能な場合もありますし、難しい場合もあります。美容院でも、あの人と同じようにとオーダーしても顔や頭の形、髪の毛の癖や毛質などで少し思っていたのと違うということもあるのではないかと思います。
矯正治療は口の中の歯根や歯槽骨といった外から見えない所まで考慮しながら治療を行うため、人による差が大きく出てきます。
少し例を挙げていこうかと思います。
・出っ歯が気になるという症例
出っ歯が気になるので治療してほしいという人が相談に来たとします。
ある人は上顎の歯が外側に倒れてしまっていることによる出っ歯、別の人は下顎の成長不足によって相対的に見ると上顎が前に出ているように見える出っ歯という様に、一言に出っ歯が気になるという症状でも原因は同じとは限りません。
・開咬が気になるという症状
食べ物を前歯で噛みきりにくいという相談で来た人でも、上下の歯が離れていて噛めない状態の人や、上顎前突(上の出っ歯の症状)で歯が前後にズレているから噛めない人など原因が違ったり、複数の要因が関係してくることもあります。
また、矯正治療の途中でもよく、知り合いはもう終わったのに自分はなかなか治療が終わらない、知り合いはこれぐらいの期間で終わったと聞いていたのに自分はまだ掛かりそうなどの様に、治療期間に関する不安なども耳にすることがあります。
初めにおおよその治療予定をお伝えしますが、これは矯正治療の経験から一般的にはこれぐらいという概算の予定を計算したものをお伝えしています。
そのため骨密度や歯根の状態、取り外しが可能な可撤式矯正装置などを使用している場合は患者さん自身の装置の使用時間などによって大きく異なることもあります。
また、お子さんなどでは小さいうちは女の子の方が成長が早く、男の子の方が年齢が上がってから成長するスピードが上がってくるということもありますので、男女による治療のスピードなども多少出てくることもあります。
いずれにしても、私たち矯正治療を専門に治療している歯科医として、その患者さんに一番いいと思う方法をご提案し、納得していただいたうえで治療を行っていますので、気にするなというのは難しいかもしれませんが、他人を見るのではなく、ご自身の治療経過(初めと比べてどれだけ良くなってきたか)ということに注目していただけるとありがたいです。様々な治療に対するアプローチがありますので、少しでも何か不安に感じたときには遠慮なく相談していただけたらと思います。