2021/01/24
今日は顎偏位について少し書いていこうと思います。
顎偏位という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「がくへんい」と読みます。
これは、噛み合わせが左右どちらかにずれている状態を指します。
正常な咬み合わせ、歯並びの場合は上下の前歯2本の間=正中が揃っているので、
パッと見てその正中にズレがあると顎編位の可能性が分かります。
(正中のずれがあっても歯の幅の左右差によって問題がないケースもあります。)
しかし、前歯の上下は揃っているのに、奥歯の方をチェックしてみると顎編位になってしまっているという患者さんがいるので注意が必要です。
■顎偏位による問題
上下の噛み合わせが左右どちらかにずれているということは、
食べ物を噛む度に使う筋肉のバランスも偏ってしまいます。
口周りの筋肉は顔や首から肩にかけてつながっていきますので、
様々な身体の不調につながってしまうリスクが存在します。
また、咀嚼自体にもしっかりと噛めないことで、栄養吸収の問題なども起きてしまいます。
もちろん状態が悪いと、口を閉じていても顔の左右バランスがズレていて、
見た目も悪いということもあります。
■顎偏位の原因
様々な原因が挙げられますが、お子さまにおいては頬杖などの癖がないかをチェックしてあげてください。遺伝によるものもありますが、頬杖などの外的要因が影響して、顎偏位につながったり、あるいは放っておくと悪化することもありますので、早めの対処をしましょう。
■顎偏位の治療について
顎偏位の治療については、患者さんの年齢や状態の重度によって変わってきます。
軽度の顎偏位であれば歯を抜かず、手術をしないで治りますし、
重度の顎偏位の場合は抜歯、手術を伴うこともあります。
この顎偏位に関しては、患者さんご自身が気付かないということも結構ありますので、
ぜひ一度奥歯を鏡でチェックしてもらえればと思います。
通常上顎の奥歯が少し下顎の奥歯の外側に来ています。
もし下顎の奥歯が上顎の奥歯よりも外側に出ているようでしたら、
顎偏位の可能性がありますので、一度検査されることをお勧めします。
2020/09/22
今日は口唇裂(こうしんれつ)と口蓋裂(こうがいれつ)、顎裂(がくれつ)について少し書いていこうと思います。
口唇裂、口蓋裂は、顎裂は、形成外科として扱われる先天性異常の疾患として知られています。胎児のうちになんだかの影響を受けて起こります。
遺伝によるもの、そうでないそれ以外のものなど原因は様々で、患者さんごとの原因を完全に特定することは難しいとされています。
発症確立では、4~600人に一人と言われています。
■口唇裂
口唇裂は、程度によりますが唇に割れ目がある状態で、軽いものから鼻まで割れ目が届いているケース、1か所だけ割れ目があるもの、2か所割れ目があるものとあります。
■口蓋裂
口蓋裂は口の中の上部に割れ目が存在するものです。
口を閉じていればわからない疾患ですが、鼻とつながっている為様々なトラブルにつながっているケースがほとんどです。
発音の問題や気管に問題が起きてしまうリスクもあります。
■顎裂
顎裂は、歯茎に割れ目が存在している状態を指します。
多くの場合、口唇裂や口蓋裂に合併しています。
歯茎に隙間が存在するため、歯列弓(歯の並びのこと)が正常ではなく、噛み合わせや歯並びの問題が生じています。
これらの疾患で症状が重度の場合は生後3か月前後に手術をするケースがほとんどです。しかし、口唇裂などでそれほど症状がひどくない場合、そのままにしている方もいらっしゃいます。あるいは小さいころに手術を行っても、歯列異常は改善されていないケースが多く存在します。
特に顎裂の場合、歯茎に隙間があるため隣の歯のバランスがおかしくなり、
ほとんどの場合不正咬合になっています。
こういった疾患の矯正治療は症状が軽ければ通常の矯正治療で治っていきますが、
歯を並べるための土台づくりが大切になるため、患者さんの状態、年齢によって治療内容が変わってきます。
単にブラケット(矯正装置)をつけて歯を並べようとすると、状態によっては悪化してしまうリスクもあるため、各症状の度合いや成長状況を見て、場合によっては外科とタイアップしながら丁寧に治療を進める必要があります。
全ての不正咬合において、表側から見えない骨、歯根の状況なども検査したうえで治療計画を立てていきますが、口唇裂、口蓋裂、顎裂の場合は特に丁寧に状態を把握したうえで治療計画を立てていきますので、気になる症状の方は、矯正専門医院に早めにお問合せ下さい。
※上記症状は健康保険適応となりますが当院では健康保険の取り扱いはないため健康保険取り扱いクリニックまたは大学病院等へお問い合わせ下さい。
2020/09/14
今日は顎の成長と歯並びについて少し書いていこうと思います。
まず、第一にお伝えしておきたいのが、顎の骨と歯並びは密接に関わっているということです。
少し当たり前の話ですが、歯は顎の骨が土台となり、
その大きさ(広さ)や形に大きく影響を受けます。
そのため、顎の骨の成長は、歯並びに大きく影響を与えるということは間違いありません。顎の成長が正常に進まないと、様々な不正咬合の原因となってしまうことが多々あります。
■顎の成長がしっかりと進まない原因は?
これは子どもによって様々ですが、大きく遺伝などの先天的要因と、後天的なものにわかれます。後天的な原因としては、頬杖などの悪習慣により、余計な力が顎に加わることによるものや、やわらかいものばかりを食べることなどが考えられます。
■顎の成長がおかしくなるとどうなる?
しっかりと顎が広がらなかった場合は、永久歯が並ぶスペースが足りず、叢生(乱ぐい歯や八重歯)や捻転(歯がねじれている状態)などが起きてきます。左右バランスが整わないと、噛み合わせがズレることから顎関節症にまで発展するケースもあります。
また、上下のどちらかがうまく成長しないことでは、上顎前突(出っ歯)や下顎前突(受け口)などにもなります。
■成長の確認
基本的に顎の骨は上顎が先に成長し、下顎はそれについていく順番で成長していきます。そのため、もし下顎の方が広がる、あるいは下顎前突のようになり始めていたとしたら、早めの検査をお勧めします。
そもそも外から見ても明らかな劣成長がわからない場合は、一度セファロなどの頭部X線写真を撮って確認することも可能です。
セファロはX線カメラで頭の正面と側面から撮ります。
そして重要になる歯の先端や顎の先端、大臼歯の位置関係などを線で結び、正常なものと比較して状態を正確に確認することが出来ます。
■早めの検査がなぜ重要?
骨の成長は、成人になり止まってしまうとどうすることもできません。
重度の不正咬合になっている場合、外科手術(骨切りと呼ばれる治療など)が必要になってくる可能性があります。
しかし、骨の成長がまだまだ進む段階の子どもであれば、
骨の成長を促す治療方法がたくさんあります。
将来の外科手術や、抜歯の可能性を下げておくことが出来るのです。
今日は少し怖いお話を書きましたが、逆に早めの検査をすることで安心して頂けることの方が多いと思います。
検査をすることで治療をしないでよいという結論も多々ありますので、
少しでも気になることがあれば早めに確認してみることをお勧めいたします。
2020/05/27
歯並びや噛み合わせが人それぞれであるように、
歯そのものに異常がみられるケースがあります。
歯の形態異常と呼ばれ、いくつか種類があります。
歯自体の形が通常と異なるため、多くの場合、
対合歯(上の歯であれば下の歯のこと)とのバランスが正常にならないため、
噛み合わせ以上や噛み癖から来る様々なトラブルにつながってしまう
リスクが生じてしまいます。
今日はそういった歯の形態異常に関して少しご紹介したいと思います。
■矮小歯
これは以前ご紹介したこともありますが、
歯自体がとても小さいものを指します。
円錐歯、栓状歯とも呼ばれ、多くの場合上顎側切歯(上の前から2番目の歯)におきます。歯が小さいことにより、歯の間に隙間が生じてしまい、
磨き残しからくる虫歯(う蝕)リスクがあります。
■巨大歯
これは言葉の通りですが、通常より大きい歯のことを指します。
矮小歯と比べてあまり多くない形態異常です。
片側の歯だけ大きい場合、左右の歯並びのバランスがおかしくなってしまったり、
対合歯とのずれから噛み合わせ異常につながってしまうこともあります。
■癒合歯
「ゆごうし」と読みます。これは、2本の歯がくっついて生えてくるもので、
歯の中の神経も一つにつながっています。
乳歯の下顎前歯でよくみられます。
二つにつながった歯の間の溝にプラークがたまりやすく、
虫歯リスクが高いことが懸念されます。
また、二つにつながっている為、歯根がしっかりしていて、
生え替わりの時期になかなか乳歯が抜けないということも起こります。
生え替わりに時間がかかることで、
他の生えてくる永久歯に悪影響を与えてしまうことも考えられます。
■癒着歯
「ゆちゃくし」は、癒合歯に似ていますが、
もともと別々に生えてきた歯の表面にあるセメント質が肥厚する過程で癒着したものを指します。
これらのような歯の形態異常があるお子さまの場合、
最も大切なことの一つが、歯列全体と噛み合わせ全体のバランスをしっかりと確認することです。形態異常の原因は遺伝など様々ですが、隣の歯との関係や、
咬み合わさった部分とのバランスなども患者さんによって違います。
その上でその形態異常の歯を残すのか、
抜歯する必要があるのかを慎重に見極めていくことが大切です。
あまりケースとしては多くないかもしれませんが、
噛み合わせのバランスに大きく影響するのが歯の形態異常ですので、
気になる場合はいつでもご相談ください。
2019/01/30
今日は矯正治療における「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」についてご紹介したいと思います。
まず、みなさんご存知の通り、歯は乳歯と永久歯があります。
全て乳歯である乳歯列は大体3,4歳から6歳くらいまでで、
混合歯列期と呼ばれる乳歯と永久歯が混在する生え替わりの時期を越えて、
12歳ころに永久歯に生え替わります。
この8歳から12歳の混合歯列期は、比較的上顎の骨の成長が進み、
12歳ころからの永久歯列機は下顎の骨の成長が進みます。
このⅠ期治療とⅡ期治療は、矯正治療ということでは同じですが、
治療していくアプローチが異なってきます。
特に叢生(デコボコ、乱ぐい歯、八重歯)や、
捻転(歯がねじれている状態)を考えるとその違いが分かってきます。
まず、Ⅰ期治療は、これから生えてくる永久歯がしっかりと並ぶように、
その土台を作っていく矯正治療を行います。
これまでも書いてきましたが、叢生になる原因として最も多いのが
歯が並ぶスペースがキッチリと確保できないことが挙げられます。
顎の骨の成長が遺伝などの理由からしっかりと進まず、
正常な並びが出来ずに歯がねじれたり飛び出したりしてしまうのです。
そのため、Ⅰ期治療では、拡大床などを使い、
歯が並ぶための土台になる骨を広げて、歯が並ぶようにします。
これに対してⅡ期治療は骨の成長がある程度終わっているため、
治療アプローチが変わってきます。
成人の患者さんでも歯列の拡大を行いスペースを確保することもできますが、
智歯(親知らず)の状態を確認して、
第二大臼歯から奥方向に移動させてスペースを確保したり、
歯の側面を本当にわずかに削って(ディスキング)スペースを確保することもあります。
その中でスペース確保がどうしても厳しい場合は、抜歯することもあります。
ここで問題になるのが、抜歯するかどうかということですが、
単に抜歯することでスペース確保でき、
治療が簡単という理由で抜歯することはしません。
抜歯するのは、上記のアプローチを検討してみて、
それでも無理やり治療すると歯並びがまたおかしくなってしまうリスクがあるときです。そのため、後戻りリスクなどを含めて患者さんに
ご説明したうえで抜歯の有無を決めていきます。
このようにⅠ期治療とⅡ期治療はアプローチが変わってきます。
Ⅰ期治療のメリットとしては抜歯の可能性が下がることがありますので、
お子さまの歯並びが気になる場合は、早めに検査されることをお勧めいたします。